![]() |
--VOL.13-- モバックショーに行って来ました 2003.2.28 |
先日、東京で行われたモバックショーに行ってきました。おそらく一番大きな製パン・製菓の展示会です。メーカーの新しい機械や材料の紹介、様々なイベントがあります。2日間の日程で東京に行って、モバックを見て、東京のパン屋さんもまわろうと思っていたのですが、結局2日間丸々モバックの会場にいました。この会場で久しぶりにいろんな人に再会できました。それが一番うれしくて、心に残りました。モバックの会場を離れる時、会場にむかってありがとう!と頭を下げたくらいすてきな気持ちで一杯でした。
先号でも紹介した、私がほとんどパンを作る技術がない頃お世話になった東京のサンジェルマンの方とも再会し、いろんな話をして、これからも連絡をとりましょうということで別れました。テレビのうるるん滞在記に出演し、会場でも超人気者だったドルフェール氏との再会もできました。2人で抱き合って再会を喜び、いろんな話をしました(と言いたい所ですが、うまくフランス語が口から出ず、私が言っている事が伝わったかどうかは疑問です。ちょうどパリから友人が来日していたので一緒に話してもらい、なんとか通じました。)。フランス語をちゃんと勉強しなくては…またまた反省してしまいました。でも、言葉ではうまく通じなくても、心って通じますよね。相手の表情やしぐさ、言葉のふんいきから伝わってくるものです。私もあのテレビを見て、感銘を受けた一人で、ドルフェール氏の生き方・考え方がすてきだなと何度もビデオを見直しました。パン作りが人生そのもの、お金や家を建てたりするためにパンを作っているのではなく、喜んで食べてくれる人々のためにパンを焼いている。というその言葉が、そのまま私の想いでもあるからです。その気持ちを伝えたかったのですが、うまく表現できませんでした。でも、またお会いする約束をして別れました。言葉ではない、なんだかあったかい心の一部でしっかりとつながっているという気持ちでした。
他にもいろんな人と再会したり、出会ったりしました。私が、今の私という存在まで成長できたのは、今まで出会った方々のおかげです。決して一人では何もできなかった。いろんな人と出会い、チャンスをもらい、影響を受けお世話になって、技術と人間性を磨いてきました。これからも、いろんな人と出会うことで、成長させてもらうのだろうなと思います。いかにすてきな人と出会えるか、また出会える様に努力するかそれが重要だと思います。
今、パン業界で一番元気がいいパン屋さんだと言われている横浜のパンステージプロローグというお店があります。駅からバスで10分。林を前にしたお店は、わざわざパンを買いに来るお客様で成り立っているそうです。今年4年目に入るパンステージプロローグは、1年目日商15万そして3年目平日30万、休日は60万を売るのだそうです。そこのオーナーシェフの山本氏ともお話することができました。(と言うよりは、会場を見てまわっていた山本氏に、“すみません…”と話しかけ、いろいろとお話させてもらいました。)朝1時半から夜の9時まで働くのだそうです。1日のすい眠時間は2、3時間、その生活をずっとしてきたそうです。何かを一生懸命にやっている時、ふと疑問に思うことがあると思います。このままでいいのだろうか、何を目標にがんばればいいのか、ほんとうに自分はこの仕事をやりたいのか、きっと誰もがこんなことを考えてしまうのではないでしょうか。
パンを作る仕事は、ほんとうにすばらしい仕事です。しかし、長時間で体力もいるきつい仕事でもあります。私は山本氏にいくつかの質問をしてみました。
“何を目標にがんばっているのですか?”
“特にありません。やるしかない、それだけです。”
私はその山本氏の言葉の中に、深く感じるものがありました。目の前のことを、とりあえず一生懸命にやる、自分の与えられた場所で、できることすべてをがんばる、そしたらきっといろんなことが生まれてくる。目標だって、大きな道だって、今の自分では想像もできない様な展開が生まれてくる。だから、毎日、日々を一生懸命に生きる、パンを焼くそれだけなのだと思うのです。また、こういうことも言われていました。
“お客様は人を買いに来る。そこで働く人々の生き様を見ている。”
私達スタッフも、それぞれが目標をもってがんばっています。これから、パン職人を目指そうとする新しいスタッフ。後輩の指導、毎日のパンの製造と日々の仕事に追われ私のほんとうの目標は?と探しつつ、日々悩みながらそれでも前向きにがんばっているスタッフ。パン教室の先生という自分のやるべき道を見つけ、トレボンの中でも欠くことのできないスタッフとして、忙しい日々の中にも人生を楽しんでいるスタッフ。他の人よりも器用ではないので人一倍の努力が必要で、毎日年下からもっともっとと怒られても、それでも毎日自分の中の精一杯の力でがんばっているスタッフ。パンを作るこの道で生きていきたい。その思いなのだと思います。そして私も、いろんなことで悩みつつ、自分という存在の小ささにはがゆさを覚えつつ、それでも毎日を一生懸命にがんばる、それしかないと日々パンを焼いています。
プロローグは長時間労働のきつい仕事の中、ほとんどのスタッフは辞めずに4年目を迎えるそうです。スタッフが辞めずに続くには、オーナーシェフの姿、生き様が大事だと言われました。私にはその言葉がとても重く、今の私には自信がありません。でも悩みながらも今を精一杯の力で生きるしかないのだと思っています。これまでパンを作る仕事を通して、味わってきた多くの感動を、これからパン職人を目指すスタッフ達にも是非味わってほしいと願っています。山本氏とお話ができてとてもうれしく、“プロローグを目指してがんばります!!”と言ってお別れしました。